監査における不正リスク対応基準
第三 不正リスクに対応した監査事務所の品質管理
1 不正リスクに対応した品質管理
監査事務所は、不正リスクに留意して品質管理に関する適切な方針及び手続を定め、不正リスクに対応する品質管理の責任者を明確にしなければならない。
2 監査契約の新規の締結及び更新における不正リスクの考慮
監査事務所は、監査契約の新規の締結及び更新の判断に関する方針及び手続に、不正リスクを考慮して監査契約の締結及び更新に伴うリスクを評価すること、並びに、当該評価の妥当性について、新規の締結時、及び更新時はリスクの程度に応じて、監査チーム外の適切な部署又は者により検討することを含めなければならない。
3 不正に関する教育・訓練
監査事務所は、監査実施者の教育・訓練に関する方針及び手続を定め、監査実施者が監査業務を行う上で必要な不正事例に関する知識を習得し、能力を開発できるよう、監査事務所内外の研修等を含め、不正に関する教育・訓練の適切な機会を提供しなければならない。
4 不正リスクに対応した監督及び査閲
監査事務所は、不正リスクに適切に対応できるように、監査業務に係る監督及び査閲に関する方針及び手続を定めなければならない。
5 不正リスクに関連して監査事務所内外からもたらされる情報への対処
監査事務所は、監査事務所内外からもたらされる情報に対処するための方針及び手続において、不正リスクに関連して監査事務所に寄せられた情報を受け付け、関連する監査チームに適時に伝達し、監査チームが監査の実施において当該情報をどのように検討したかについて、監査チーム外の監査事務所の適切な部署又は者に報告することを求めなければならない。
6 不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断した場合等の専門的な見解の問合せ
監査事務所は、不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況が識別された場合、又は不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断された場合には、必要に応じ監査事務所内外の適切な者(例えば、監査事務所の専門的な調査部門等)から専門的な見解を得られるようにするための方針及び手続を定めなければならない。
7 不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断された場合の審査
監査事務所は、不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断された場合には、修正後の監査計画及び監査手続が妥当であるかどうか、入手した監査証拠が十分かつ適切であるかどうかについて、監査事務所としての審査が行われるよう、審査に関する方針及び手続を定めなければならない。
監査事務所は、当該疑義に対応する十分かつ適切な経験や職位等の資格を有する審査の担当者(適格者で構成される会議体を含む)を監査事務所として選任しなければならない。
8 監査事務所内における監査実施の責任者の間の引継
監査事務所は、監査業務の実施に関する品質管理の方針及び手続において、同一の企業の監査業務を担当する監査実施の責任者が全員交代した場合、不正リスクを含む監査上の重要な事項が適切に伝達されるように定めなければならない。
9 監査事務所間の引継
監査事務所は、後任の監査事務所への引継に関する方針及び手続において、後任の監査事務所に対して、不正リスクへの対応状況を含め、監査上の重要な事項を伝達するとともに、後任の監査事務所から要請のあったそれらに関連する調書の閲覧に応じるように定めなければならない。
監査事務所は、前任の監査事務所からの引継に関する方針及び手続において、前任の監査事務所に対して、監査事務所の交代事由、及び不正リスクへの対応状況等の監査上の重要な事項について質問するように定めなければならない。
監査事務所は、監査事務所間の引継に関する方針及び手続において、監査チームが実施した引継の状況について監査チーム外の適切な部署又は者に報告することを定めなければならない。
10 不正リスクへの対応状況の定期的な検証
監査事務所は、不正リスクへの対応状況についての定期的な検証により、次に掲げる項目が監査事務所の品質管理の方針及び手続に準拠して実施されていることを確かめなければならない。
- 監査契約の新規の締結及び更新
- 不正に関する教育・訓練
- 業務の実施(監督及び査閲、監査事務所内外からもたらされる情報への対処、専門的な見解の問合せ、審査、監査実施の責任者間の引継を含む)
- 監査事務所間の引継