四半期レビュー基準の設定に関する意見書
二 主な内容と考え方
1 四半期レビューの目的
「四半期レビューの目的」では、国際的な基準との整合性も勘案し、四半期レビューの目的は、四半期財務諸表の適正性に関する消極的形式による結論の表明にあること、すなわち、経営者の作成した四半期財務諸表について、一般に公正妥当と認められる四半期財務諸表の作成基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適正に表示していないと信じさせる事項がすべての重要な点において認められなかったかどうかに関し、監査人が自ら入手した証拠に基づいて判断した結果を結論として表明することにあるものとした。
一方、年度の財務諸表の監査の目的は、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人が自ら入手した証拠に基づいて判断した結果を意見として表明することにある、としている。ここで、「すべての重要な点において」の位置が年度の財務諸表の監査の目的と四半期レビューの目的とでは異なっているが、年度の財務諸表も四半期財務諸表も、適正に表示しているかどうかの判断の基準に変わるところはなく、国際的に一般化している四半期レビューに特有の消極的形式による結論の表明を邦語で表現する上で、位置を変えているに過ぎない点に留意する必要がある。
四半期レビューにおける監査人の結論は、本四半期レビュー基準に従い、不適切な結論を表明するリスクを適度な水準に抑えるために必要な手続を実施して表明されるものであるが、その手続は、質問及び分析的手続等を基本とし、監査基準に準拠して実施される年度の財務諸表の監査に比べて限定的な手続からなる。また、四半期レビューは、財務諸表には全体として重要な虚偽の表示がないということについて合理的な保証を得るために実施される年度の財務諸表の監査と同様の保証を得ることを目的とするものではない。
ただし、四半期レビューは、年度の財務諸表の監査を前提として実施されるものであり、監査人は年度の財務諸表の監査と適切に組み合わせて四半期レビューを実施することにより、監査人が被監査企業の重要な虚偽表示に関わる情報を入手する機会が増すなど、全体として監査の実効性がより向上することが期待される。
監査人は、年度の財務諸表の監査を通じて得た、内部統制を含む、企業及び企業環境についての理解を四半期レビュー手続の中でも有効に活用していくことが求められるとともに、年度の財務諸表の監査における重要な着眼点等については、四半期レビューの中でも必要な検討を行い、併せて四半期レビューの結果は年度の監査計画にも適切に反映させていくことが求められる。
また、四半期レビューの目的の達成に関連して、監査人が備えるべき要件及び監査に対する姿勢について定めている監査基準の一般基準及び監査に関する品質管理基準は、四半期レビューにも適用されることに留意する必要がある。
したがって、監査人は、四半期レビューにおいても、年度の財務諸表の監査におけると同様に職業的専門家としての正当な注意を払い、特に、四半期財務諸表が一般に公正妥当と認められる四半期財務諸表の作成基準に準拠して作成されていない事項が、すべての重要な点において存在するかもしれないとの職業的懐疑心をもって四半期レビューを計画し、実施しなければならない。また、監査人は、四半期レビューにおいても、監査に関する品質管理の基準に基づいて定められた方針と手続に従い、審査その他の品質管理を実施しなければならない。